リアリティ

周りがビルに囲まれた、ある小さな公園で
酔っ払いがタバコを吸っていた。


大切な仲間だと思っていた人がいたらしい。
その人は、命を削る思いをしながら協力し
いくつもの物事を造り上げ、仕上げ、世に送りだした。
空になっていた力さえ振り絞り
自分の限界をも大きく越える、熱く、魂をこめた物達を。


しかし…


現実は寂しい物で、今、その人は独りで空に煙を吐いていた。
抜け殻になって、空を見上げていた。
仲間だと思っていた人から
思ってもいなかった寂しい現実を突き付けられ。
凍り切った心、見る影も無いその姿で
天を仰いでいた。


もう一度あの頃に戻れれば…
今度は笑って過ごしていけるだろう…


そう言って、眠らない街へ消える。


分かっていたのだろう。
戻る事のない時を。


必死にもがいても、風を掴む様な行為。
心は裂かれたら、裂かれたまま。
いくら心が満たれる事を願っても
手は届きそうで届かなくて、孤独と絶望に打ちのめされてしまうのに…


この空の向こうに、そんな奴らがいる。
それでも。
無事を祈って、毎日を過ごしている。
とてつもなく大きな代償を抱えて。


別れ際にマルボロのブラックメンソールを一箱。
去りぎわ、背中を向けて手を上げた。
その背中は、どこまでも熱く
そして凍っていた。